#23「イタリアはジェラートのように甘くない。」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15 ネタ話

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2006年10月6日。
夏をひきずったような、少し暑い秋のはじまりの日。ボクは良く晴れたフィレンツェの街を歩いていた。

成田からパリのシャルル・ド・ゴール空港を乗り継いで、昨日の夜イタリアに着いたばかりだった。時差ボケのせいもあり、体も心もこの国にまだなじめていない。仕事ではなく、こうして知らない国をカメラ片手にゆっくりと観光するのは、実に10年振りだ。

かつかつと靴音が響く石畳。100年たっても変わらない洋風建築の街並。まるで街全体がディズニーシーのようだ。

そんな風景の中ボクの目の前に、突然人影がたちふさがった。

大きな地図を広げたイタリア人のおばちゃんだ。わけのわからぬイタリア語でなにやらまくしたてている。どうやら道を尋ねているらしい。
「なんで東洋人の観光者にイタリア人のおばちゃんが道を聞くんだろ?」
短い時間の中ですばやく思いを巡らせた。

その2秒後、謎は解けた!

いまリアルタイムでボクの人生に事件が起きている。腰のあたりから、ざわざわした冷たい感触が伝わってくる。この瞬間、ウエストバックが確実に開けられているのだ。心臓を鷲掴みされたような電流が背中を走った。

このババァ!スリだ!!

とっさに、ボクは体を大きくひるがえして、すばやくウエストバックの中身に目を走らせた。未遂だった。財布はまだその場所に存在した。観光者に近づき大きな地図に気をとられている隙に、財布を盗む手口のようだ。スリに失敗したおばちゃんは、悪びれること無く投げキッスをして、手品師のように人ゴミの中へ姿を消した。

それから、なんとなくのんびりとした印象を抱いていた風景が、がらりと音をたてるようにして変わった。そういえば、イタリアのガイドブックに「スリに要注意!」と書いてあったのを思い出した。油断をしていたわけではないが、こうもたやすく自分の身に事件が起きるとはソフトバンクの通話料金よりも予想外だった。

 

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そんなことを考えながら街並を歩いていると、おいしそうなジェラート屋を発見。店員さんもなかなかの美人だ。そうだ、せっかくの海外旅行なんだから、おいしいものでも食べて気分を変えることにした。ガラスケースから見える、色とりどりに輝く甘くておいしそうなジェラート。イタリア語なんてまるっきりできるはずもなく、その中のひとつをボクは指でさした。

そして、また事件は起きた

店員が突如、メガホンのような特大コーンにジェラートを流し込んだんだ。サーティーワンアイスクリームの5倍はありそうな巨大なサイズ。ガラスケースの上には、通常サイズのコーンも飾ってあるのに。

「バカヤロウ!誰もそんな大きなサイズ頼んじゃいねぇぞ!オレは大喰いチャンピオンかバカヤロウ!」
とボクは寺島進アニキばりのドスのきいた太い声で怒鳴りちらした。

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あくまでも、心の中で…。だってここは哀しいかなイタリア。大和の国の言葉がわかるはずもなく、しかもこの店員は英語も通じない。しかたなく、お金を払おうとしたが、財布の中には昨日空港で両替した大きな札しかない。一番小さなお札でも20ユーロ(約3,000円)だったので、そいつを渡した。

そしたら、またもやビックサプライズ!返ってきたおつりはたったの5ユーロ(約750円)だ。つまり、ジェラートひとつが日本円で2,250円!

なめんじゃねぇぞ、バカヤロウ!とボクは店内を見合わした。

「やられた!」店のどこにも値段が書いていない!

つまり、イタリア語がわからない観光客には、頼んでもいない特大ジェラートを勝手に作って、通常ありえない金額を請求する手口なのだ。

初めて食べたイタリアのジェラートは、思っていたよりほろ苦い味がした。

観光初日に、スリ&詐欺のダブルパンチ。そうだ、ここはディズニーシーなんかじゃないんだ。

イタリアはジェラートのように甘くはねんだよ、バカヤロウ!


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