#24「伊国のマックで待ちぼうけ 前編」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15

Italia_01
夜風が足下をすり抜けていった。

2006年10月。
僕はマクドナルドの前にいた。
ただのマクドナルドではない。
ここはイタリア。
フィレンツェの駅前にあるマクドナルドだ。
腕時計の針に視線を移した。

PM 8:30

約束の時間を30分も過ぎている。
「もうダメかな。」と呟いてみた。

旅のトラブルというものを僕は嫌いでない。
問題が発生したときに、自分がそれをどうやって切り抜けるのかが、旅の醍醐味であり快感でもあるからだ。ぞくぞくするような緊張感も悪くない。ただ今回ばかりはその快感を味わうことはできないかもしれない。

僕は顔をあげた。
そして一息吸ってから少し前を通り過ぎる車の流れをみつめた。
本当だったら今頃は、シュンの働くレストランで本場のパスタを口いっぱいに、ほおばっているはずだったんだ。

それがイタリアに着いて二日目の夜に、まさかこんなことになるなんて。

いまから約10年前のオーストラリア。ケアンズにある、日本人ばかりが暮らす一軒家の安宿で僕はシュンと知り合った。自分よりも2つ年下で知り合った当時、彼は二十歳。誰とでもタメ口で話し、誰にもこびることのない性格の持ち主だ。それが時には生意気にも映るし、時にはうらやましく感じることもある。シュンはケアンズにあるイタリアンレストランで皿洗いのバイトをしながら暮らしていた。

そんな彼が3年前、イタリアへ渡った。
本場でイタリア料理の修行をする為だ。

シュンが働くレストランで、おいしいイタリア料理をごちそうになる。それがこの旅の大きなイベントのひとつだった。

フィレンツェから南へ下ったところに、キャンティというワインで有名な田舎町がある。そこのレストランでシュンは働いている。夜の7時にキャンティ行きのバスが、フィレンツェ駅のターミナルから出発する。日本を出発する前に彼から教えてもらった情報だ。

だから、予定時刻よりも少し早めにその場所へ足を運んだ。ところが、なぜかバスの発券所は閉まっていた。
最初、場所を間違えたのかと思った。旅のガイドブックを頼りに、馴染みの薄いイタリア語で書かれた看板に目を走らせた。
何度も確認したが、やはり間違いではない。

確かにここがキャンティ行きのバスの発券場所だ。不安になり、つたない英語でバスの運転手らしきおじさんに声をかけた。
すると何やら神妙な顔つきで、おじさんはイタリア語まじりの英語を返してきた。

「○※☆▲△ストライク!!★□※○クローズ!!」

ストライク?
クローズ?
この言葉だけが、僕の耳に届いた。
ストライク……バス…….クローズ…….
連想ゲームみたいに、言葉と言葉を繋げて想像する。

………!

わかった!
どうしてバスの発券所がしまっているのか。
ストライクではなくて、ストライキだ。
どうやら、今日に限ってイタリアのバス会社がストをおこしているらしい。
この街からキャンティまではバスで50分もかかる。タクシーで行くにはあまりにも遠すぎる距離だ。そのレストランは山里にあり、電車でいくことも不可能。

困った。
せっかくイタリアまで来たのに、シュンが作ってくれるイタリア料理が食べられないなんて。

しかも明日にはフィレンツェを出発してナポリへ向かうことになっている。
チャンスは今夜しかない。
しかし、交通手段が無くなってしまった。
パスタへ続く道が閉ざされてしまった。

中編に続く………。


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