#36「伝説の旅人 後編」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15

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どこまでも、真っ直ぐに伸びる一本道。
その先の遠くに見える、小さな人影。バイクのアクセルをまわし、その人影を追いかける。視覚がその影をだんだんハッキリとした形としてとらえていく。

幸ちゃんだ。
たしかにリヤカーを引いている。やっぱり西オーストラリアを歩いているという噂は本当だったんだ。

夏休みの少年のように、真っ黒に日焼けをしている。大きなリヤカーを引きながら赤い大地を踏みしめて、一歩一歩、歩いている小さな体。ボクは横に並び、バイクのエンジンを止め、幸ちゃんに話かけた。

会ったらまず最初に、冷たい飲み物を差し入れしようと決めていた。それを気持ちいいくらいに、ゴクゴクとのどの奥へ流し込んでくれる幸ちゃん。まるで生き返ったような笑顔に、ボクは早速カメラを向けた。

自己紹介をして、少し落ち着いたところで、幸ちゃんに一番知りたかったことを尋ねた。

「どうしてオーストラリアを、歩いて旅しようと思ったの?」

旅をする手段は、バス、車、バイク、自転車など、いろいろあるのに、なぜ歩こうと思ったのか?それが不思議でならなかった。だって、普通だったら、「水や食料が無くなったらどうするの?」とか、「地平線のど真ん中で急に倒れてしまったらどうするの?」など、最初に不安要素で頭がいっぱいになって、やる前からあきらめてしまうはずだから。

すると幸ちゃんは、少し考えてからこう答えた。

「うーん、そうだなぁ、歩くのが好きだからかなぁ。」

その答えはあまりにもシンプルで、聞いた瞬間、思わず笑ってしまった。何かをやる前に出来ない理由を探すのではなく、「好きだからやる」。その気持ちが、きっと一番大切なんだ。

この言葉が、いままでの迷いの糸をすべて断ち切ってくれた。

「写真が好きだから、カメラマンになろう!」

先の心配は、未来の自分にまかせることにしよう。今は自分の思うがままに行動すればいい。

幸ちゃんと別れる前、持ち歩いていたノートに、日本の連絡先と「好きな言葉」をひとつ書いてもらった。

「ローマの道は一日にしてならず」。

その言葉を読んで、ボクはまた思わず笑わってしまった。

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伝説の旅人  おしまい。

★おまけのリヤカー幸ちゃん伝説

幸ちゃんは、オーストラリアを旅する前、北海道から沖縄まで自転車で縦断したことがあるらしい。そして、ゴールした沖縄で
「思ったより大変でもなかったなぁ。」と言葉を残し、帰りは沖縄から北海道まで、なんと歩いて帰ったそうだ。

どんだけー!!!


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