#42「お会い出来て良かった、小栗旬。前編」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15 ネタ話

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突然、人生に奇跡が起きた。

それは夏が終わり秋の始まりといった、少しばかり肌寒い日の出来事。この奇跡のような一日を、一生忘れることは無いだろう。

2007年9月28日 金曜日
会社のスタジオで撮影中に携帯が鳴った。
お世話になっている出版社の編集者さんからだ。

「篠部さん、大変急で申し訳ないんですけど、明日撮影をお願いできませんか?」

「明日ですか?えーと、大丈夫ですよ。ぜひお願いします。」

「ありがとうございます。まだ時間がハッキリしないんですけど、場所はTBS緑山スタジオです。」

「了解です。それでどんな撮影ですか?」

「ドラマの収録風景を撮っていただきたいんですが、もし時間があれば決めのカットも押さえられたらいいんですけど、時間的に無理かもしれません。」

「なるほど、ドラマの現場は時間が読めませんからねぇ。それで、どなたの取材なんですか?」

「小栗旬さんです。」

その瞬間、地球が震えた。

去年の24時間テレビで放送された「ユウキ」。そのドラマでハマ役(篠部雅貴のオーストラリア時代のあだ名)を演じてくれたあの小栗旬くん。

いつかは撮ってみたいと思い焦がれてはいたけれど、難しいだろうなぁと正直思っていた小栗旬くん。しかし、あれから約一年後、夕立ちのようなチャンスが突然、天から降ってきた。

2007年9月29日 土曜日

ロケ機材と一緒に、僕はあるものをカメラバックに詰め込んだ。たぶん、昨日の電話の様子だと小栗くんと直接話す時間なんてないだろう。しかし、もしものことを考えて、それも一緒に持っていくことにした。

横浜市にある緑山スタジオまで、小雨降る街を抜け、車を走らせた。受付のあるロビーで編集者さんやライターさんと合流し、早速ドラマの収録現場まで向かう。エレベーターで3階へ上がり、楽屋や化粧室のある廊下を突き進んでいく。

そして、その先にある防音された大きな扉を開けた。薄暗いスタジオ内に足を踏み入れると、ホテルの部屋が作り込まれたセットが目に飛び込んでくる。モニターの側では監督らしき人が指示をだし、音声さん、照明さん、大道具さん、メアメイクさんなど、大勢の人達でドラマが作られていく。

ドラマ現場特有の空気に馴染む間もなく、僕はカメラをセッティングする。しばらくすると、背の高いすらっとした男が颯爽と扉の方から歩いてきた。

小栗旬だ。
一瞬、周りの空気の濃度が変わった。

足早にセットに立ち、映像用の大きなカメラの前で演技を始める。本番中はシャッター音が入ってしまうので、テスト撮影中の小栗くんへカメラを向け、シャッターを切る。顔が小さく、手足が長くて、声がいい。さすが人気イケメン俳優。

自分で言うのもなんだけど、残念ながら、どこからどう見ても実物のハマとは違う。悲しいかな、同じなのは性別くらいなもんだな。

その後もテスト撮影中やモニターで自分の演技をチェックする小栗くんを離れた距離から望遠レンズを使って撮影する。

何枚か雑誌で使えそうなカットは撮れたけど、正直物足りない。出来たら直接向き合って、きちんと決めカットを撮影したい。しかし、彼は超多忙な人気俳優。きっとこのまま現場の収録風景だけ撮って撤収することになってしまうだろう。

と、あきらめかけたそのときだ。編集者さんが小さな声で話かけてきた。

「篠部さん、ドラマの収録の合間に30分くらい時間をとっていただけることになりました。インタビューのあと、撮影をお願いします。」

「あっ、そうですか。了解です。」

平静を装いながらも、心の中で大きく飛び上がって、ガッツポーズ。
ヨッシャー!

その時、脈拍が確実に早くなっていくのを自分で感じていた。

「お会い出来て良かった、小栗旬。」中編へつづく…….。


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