#58「ドラゴンボールの聖地 後編」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15 ネタ話

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鳥山先生の家は名古屋から少し外れた場所にある。
名古屋は都会だが、Dさんと二人で降りた駅は予想以上に何も無い小さな駅だった。

タクシーを捕まえようとしたが、駅前に一台も止まっていない。しかたがないのでタクシー会社に電話をしたら、
「ちょっといま車の台数が足りなくてね、いつ駅に着けるかわからないな。」との返答が。

まるでペンギン村みたいにのどかな町だ。

するとDさんが「鳥山先生の家に電話をしてみるよ。」そんな言葉を口にした。

「もしもしDですけど、すみませんが、タクシーが捕まらないんですよ。….えっ!そうですか!?すみません、ありがとうございます。それではよろしくお願いします。」

携帯電話を手にしながら、Dさんがなんだかえらく恐縮している。

それもそのはずである。

なんと先生みずから駅まで車で迎えに来てくれるというでないか!!

あの世界の鳥山大先生を足に使ってしまうなんて、なんとも恐れ多い。

そしてそれから約5分後。緊張した二人の前に一台の赤い軽自動車が停車した。すると車の窓がウィーンと下りて、運転席にはあの鳥山先生のお顔があった。

「どーも、わざわざ遠くまでお越しいただいてすみません!どーぞどーぞ、お乗りください。」

大先生なのにとても腰が低く、しかも庶民的な軽自動車に乗って迎えに来ていただけるなんて!!!僕は心の底から感動しながら、先生の運転する後部座席に乗り込んだ。

目の前にあの鳥山明がいる!
しかもこれから、先生のご自宅へ足を踏み入れることができる。

僕のテンションは最高潮に登り詰めていた。もしもこの世に感動力を測定するスカウターが存在したら、きっと計測不能で爆発していただろう。

だがしかし、その感動も束の間だった。

先生のこの一言で車の中が凍りついてしまったのだ。

「わざわざ家に来ていただくのもなんですから、ご用件はそこの喫茶店で済ませましょうか?」

「えっ!?…………….まずい!!先生のご自宅に行けない(汗)!?」
そりゃぁそーだ、こっちの用件はただ模型をお返しするだけなのだから。わざわざ先生のご自宅まで行く必要がない。

もちろんお会いできただけでもめちゃくちゃ嬉しい。しかしドラゴンボールが生まれた場所をこの目で見たい!だってこんなチャンスは、おそらく一生無いのだから。

平和な地球に突然、魔神ブウが現れたくらい僕の心はざわついた。

「ち 地球のみんな!!たのむ!!!オラに元気をわけてくれ!!!」

僕は心の中で、力いっぱい両手を空へと挙げた。

思い苦しい空気が車内を包んだ。

このままミッションを果たせぬまま、引き下がるしかないのだろうか。

その時だ。

車内の空気の変化を感じ取ってくれた先生から一言。

「あれ!?家のほうがよろしかったですか?」

そこで編集者Dさんからのナイスフォロー。
「実は一緒に来た彼は先生の大ファンで、もしよろしければ先生の家にお邪魔させていただきたいのですが。」

「あぁー、そうだったんですか、それでは家へ行きましょう!」

ヨッシャー!やったよ悟空!先生&Dさんありがとうございます!

それからはまさに夢のような時間が過ぎていった。夜だったのでハッキリとは見えなかったが、要塞のようにデカい豪邸に到着。(もちろん軽自動車以外にも、車庫にはたくさんの車が並んでいたのは言うまでもない)バードスタジオと書かれた大きな扉を開けると、等身大のバットマンの人形が玄関で僕たちを出迎えてくれた。

大理石で囲まれたリビングに通してもらうとビックカメラでは見たこともないような大型テレビが目に飛び込んできた。

「すみませんね、ちょうど奥さんが出かけてしまって。」
と先生みずからお茶をいれてくれた。なんとも申し訳ない。

世界的な大先生なのに、全くといっていいほど偉ぶることがない。本当に素敵な人だ。

それからしばらく模型の話で盛り上がり、帰り際ついにサインをもらうチャンスが訪れた。

「すみません、もしよろしければこちらにサインをいただけませんでしょうか?」
僕はバッグからドラゴンボールのコミックを取り出し、図々しくもダメもとで一番のお願いをした。
「もし出来ましたら、悟空の絵も描いてもらえませんでしょうか?」

そしたら、「もちろん、いーですよ」と笑顔であっさりと快諾してくれた。

今、僕の目の前で凄いことがおきている。マジックペンを持った先生の右手が滑らかな曲線を走らせ、今まで何度も目にしてきた悟空がそこに描かれているのだ。

小学校の頃の僕に、この夢のような出来事を教えてあげたら、「地球に生まれてよかったー!」と叫ぶに違いない。

僕にとってのマンガの神様は手塚治ではなく、鳥山明だ。そんな神様が自分のためだけに悟空を描いてくれたなんて!

僕は興奮してスーパーサイヤ人に変身してしまいそうだ。

ドラゴンボールの聖地 完

 

おまけ「ドラゴンボール裏伝説」

◎連載中、一番忙しかったときの睡眠時間が、一週間でわずか20分だったこともあるらしい(驚)!

◎大先生ともなるとアシスタントが大勢いるのが一般的。そして背景などは自ら描いたりしないもの。ところが、鳥山先生のアシスタントはたったの一人(驚)!しかも一週間に一度、半日だけお手伝いしてもらうだけだったそうだ(ご本人談)。

◎デビュー前、先生は「週間少年マガジン」の新人賞に応募するつもりだった。しかし締め切りが間に合わず、「週間少年ジャンプ」のコンテストに作品を投稿した。それが縁で、やがてジャンプで連載をすることになったそうだ。「週間少年マガジン」が逃した魚はあまりにも大きい。

◎アニメ版ドラゴンボールは、ピッコロ大魔王編が終わったあと、ドラゴンボールZというタイトルに変更して新たにスタートした。なぜ続編に「2」でなく、「Z」をつけたのか?それは、カッコいいからという単純な理由でなく、アルファベットの最後の文字をタイトルにつけたのは、「もうこれ以上続編を描きませんよ。」という真意があったらしい(驚)!


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