#86「7DAYS INDIA その3 本物の偽物」

公開日: : 最終更新日:2015/07/12

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12月30日(木) 20:00

インドの夜を乱暴に照らす車のライト。路上に響く、鳴り止まないクラクション。大きな荷物をかかえて、駆け抜けていく人、人、人。ニューデリー駅はアジア特有の緊張感に包まれていた。

HISデリー支店で無事、鉄道のチケットを受け取ったのはいいが、どこに向かえばいいのかわからない。想像していた以上に駅は広くて、もの凄い人だかりで埋め尽くされている。

この人ごみをかき分けて深夜特急に乗り、本当にバラナシへたどり着くことができるのだろうか?夜に浮かぶ人々は皆、怪しく映り心の中に不安の雲が広がった。人ごみの中を少し歩くと、制服を着た駅員が荷物検査をするゲートの前で、両手を大きくかかげ、外国人のバックパッカー達を誘導している姿が目に映った。

しばらくその光景を眺めていると、ふとその駅員と目が合った。

「どうした?何か探しているのか?」

喧噪の中で、声は聞こえなかったが、そんな目でこちらを見ている気がした。彼に聞けば、とりあえずどこへ行けばいいのか教えてくれるかもしれない。そう思い、彼に尋ねることにした。

「このチケットを持ってるんですけど、プラットホームはどこに行けばいいですか?」

すると彼はチケットを手にして、突き刺すような鋭い眼差しで驚くようなことを口にした。

「このチケットはどこで買ったんだ?このチケットは無効だ。あの建物の後ろにあるチケットセンターで、買い直さなければダメだな。」

そして駅員の手がそのままチケットを奪おうとするそぶりを見せた。口の中が一気に乾き、ハっとして慌ててチケットを奪い返した。その瞬間、まさか、と思った。

こいつ、偽物の駅員だ!

HISデリー支店でチケットと一緒に一枚のプリントを渡されていたのだ。それは「駅での不審者に要注意」という内容で、こんなことが書いてあった。

チケットを持っている外国人旅行者に、「そのチケットは無効」だとか「それはキャンセル待ちだ」とか言いがかりをつけて新たに高額のチケットを買わせようとする人間がいます!注意してください、と。

まさか、いきなり本物の偽物に出くわすとは!

いかにも、それらしい制服を着て、堂々と偽物が公共の場に存在しているなんて信じられない。しかも、なぜこの男が荷物検査までしているのだろうか?

一瞬、頭の中が真っ白になり、何がなんだかわからなくなったが、とりあえず、男が指示した方向と逆の方向へ歩いてみることにした。するとすぐに駅の正面口と思われる場所にたどり着いた。そして、そこには大きな電光掲示板が設置してあり、プラットホームの場所も記されていた。

これでなんとかバラナシへ旅立つことができそうだ。

それから問題なく改札を通り、プラットホームへ足を運ぶと、列車はすでに到着していた。インドの電車は遅れることで有名だが、今回の列車は始発なので、問題無さそうだ。

インドの列車は1等から3等にクラスが分かれり、今回は1等の寝台列車。これから12時間かけ、ガンジス川が流れるバラナシの町へ旅立つのだ。高鳴る胸を抑え列車に乗り込み、自分の座席を探していると、背中から声が届いた。

「ナニ サガシテルノ?」

手足が長くて、背の高い、40代くらいのインド人の男。その日本語はとても聞きやすく、とても流暢に耳に響いた。

「セキガ ワカラナカッタラ オシエテ アゲルヨ。」

目の表情に鋭さはなく、面倒見が良さそうな人だ。とにかくまた、日本語で話しかけてくるインド人が現れた。はたして、この人は、善人なのかそれとも悪人なのだろうか?

その後、彼との出逢いによって、今回の旅が大きく変わることになるとは、この時はまだ知る由もなかった。

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#87 「7DAYS INDIA その4」


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