#87「7DAYS INDIA その4  旅の運命」

公開日: : 最終更新日:2015/07/12

rajisan

「お茶、飲ミマスカ?」

「サンドイッチ食ベル?」

「ウィスキー飲ム?」

「インドのオ菓子食ベル?イガイとオイシイヨ。」

バラナシ行きの寝台列車で出会ったインド人のおじさんは、とっても親切だった。それでも、最初は何かと理由をつけて僕は遠慮した。なぜなら、以前タイの旅の道中で、長距離バスで移動中、睡眠薬入りのコーヒーを飲まされたトラウマがあったからだ。

それでも話すだけなら楽しそうなので、なんでそんなに日本語が上手なのかと尋ねると、

「ニホンに9ネン住ンデタことがアッテ、トーキョーとナゴヤでハタライテタノ。」とインドのお菓子をつまみに、ウィスキーを口に運びながら、話してくれた。

彼の名はラージさん。長身で手足が長く、親しみやすくて、話しやすい。そして知的な匂いがする人だ。

話を聞いていると、ラージさんはとても親日家で、日本人の自分に何かと気を使ってくれた。彼の目には人をだまそうとする人、特有の眼光の鋭さはない。インド人というよりは、まるで日本人と話をしているみたいだった。そして時間が立つにつれ、心に張った警戒心という名のバリケードは解除されていった。

この寝台列車の等級は1等。4人で1部屋のしきりがあり、足を伸ばして横になることができる。4人の部屋に日本人は1人。残りの3人はみんな落ち着いたインド人のおじさんだった。その中の1人がラージさん。彼はなんとバラナシでガンガーフジホームという名のホテルを経営しているオーナーだそうだ。

「バラナシに着イタラ ドコトマルノ?」

「一応日本からメールで予約しておいたホテルがあるんですけど。」

「バラナシにはチンピラが経営シテイルトコロがアルカラ気をツケタホウガイイヨ。ヨカッタラ、ワタシのホテルに泊マレバ イージャン。今、部屋ガ空イテイルカドウカ 電話シテアゲルヨ。」

どーしたものか迷っているうちにラージさんは、携帯で自分のホテルに電話をかけ予約を取ってしまった。

インドに出発する前に自宅のパソコンからネットで、バラナシの安ホテルを探しておいた。メールで予約をしたといっても、あまり安心感はなかった。しっかりとした予約フォームがあるわけでもなく、ホテルからの返事はあまりにも簡素でそっけないものだったから。

それでも、そこのホテルの魅力は部屋からガンジス川を眺めることができること。そう考えただけで、胸が高鳴った。

確実に泊まれるという安心感からするとラージさんが経営するガンガーフジホームに泊まりたい。しかし、ラージさんのホテルはガンジス川まで、歩いて3.4分の場所にあり、部屋からガンジス川を眺めることができない。

日本から決めていたホテルにするべきか?それとも旅の出会い、巡りあわせを大切にしてガンガーフジホームへ泊まるべきか?バラナシは10年以上ずっと憧れていた場所。この旅の一番の目的地であり、日程の約半分を費やす3日間をそこで過ごそうと決めていた。

きっとこの決断で旅の運命は大きく変わるだろう。インドの闇を走る深夜特急に揺られながら、僕は旅のターニングポイントに立ち尽くしていた。

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#88「7DAYS INDIA その5」


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