#92「7DAYS INDIA その9 カレーの国の救世主」

公開日: : 最終更新日:2016/02/15

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2011年 1月3日
いろんな出来事があったインドの旅も、いよいよ明日が最終日。この夜行列車がデリーに着いたら、ホテルへ一泊し翌日の夕方帰国となる。

車窓から流れるインドの夜の風景を眺め、この数日間の日々を振り返り、一人感慨にふける。といきたいところだが、それどころではない。目的地の駅を乗り過ごさないように、気をはっていなくちゃならないからだ。

インドの列車は日本みたいに駅に着いても親切にアナウンスなんてしてくれない。おまけに駅は薄暗く、駅名の書かれた看板も見つけにくい。だから、どこで降りたらいいのか、いつも不安で落ち着かないのだ。

出発したアグラから目的地のデリーまでは約4時間。2等列車に乗り、指定の席で仮眠をしたあと、時計に目を移した。おそらくあと30分ほどでデリーに着くはずだ。

念のため、心配になりドアの前に立っていた体格のいい外国人の青年に声をかけた。

「すみません、デリー駅に着いたら、教えてくれませんか?」

すると青年は、爽やかな笑顔で答えてくれた。
「オーケー、わかった。君はツーリストかい?どこから来たんだ?」

「日本から1週間前にデリーに着いて、バラナシ、アグラをまわって、明日日本に帰るんだ。君はどこから来たの?」

「僕はインド人だよ。デリー出身でこれから家に帰るんだ。」

少し驚いた。彼はいわゆるコテコテのインド人ではないように見えたからだ。皮膚の色も肌黒くなく、どちらかといえば白人に近い肌の色をしていた。そんな彼と旅先で出会ったときに話す、ありがちな会話を幾つかかわした。

「それじゃぁ、デリーに着いたらよろしくね。」

「わかった。」

再び念をおして、いったん自分の席へ戻った。バックの中からカメラを取り出して、旅の記録として車内の様子にファインダーを向けた。何枚か静かにシャッターを切って、カメラをバッグにしまった。

その時だ。

迷彩服のような制服を来た警察らしき男が目の前に突然、現れた。鋭い目つきでこちらをにらみ、何かを言っている。その口調はあきらかに命令口調だ。最初、電車のチケットを見せろといっているのかと思って、男に見せたがどうやら違うらしい。その時、ハッとして思い出した。

たしかインドでは、テロなどの防止の為、列車や空港などの交通手段の中で写真を撮ってはいけないらしいのだ。

知らなかったわけではなかった。しかし、今まで2回列車に乗って写真を撮ったときは全く問題がなかった。だから今回も気楽にカメラをだしたのだ。でも、それが失敗だったようだ。

背筋に冷たい汗が流れた。まさか、旅の最終日の前日にこの旅最大のピンチが訪れてくるなんて!もしカメラのフィルムを全部だせとか言われたら、たまったもんじゃない。いままでたくさん撮ってきた写真の全てが台無しになってしまう。

その時だ。

「ちょっと待ってくれ!彼は日本からきたツーリストだ。だから心配ない!」

なんと!さっきのインド人の青年が声をかけ、自分をかばってくれたのだ。だがしかし、警官らしき男も、そう簡単に納得はしない。
「これはルールだから許す訳にはいかない。」

「本当に心配ない。あやしいことはしていないから、彼は問題ない!」

尚も、食い下がり警官と言い合ってくれる青年。なんて頼もしい男なんだ。ほんの少しだけ、会話をしただけの外国人である自分の為に、警官と戦ってくれるなんて!

そんなやり取りをしている中、列車はちょうどデリー駅に着いた。そして、彼は両手を大きく広げ、青年の背中に隠れるようにして、そのまま駅に降りた。

助かった。本当に助かった。

「本当にありがとう!おかげで助かりました。」

「よかったね。ところで君の名は?」

「マサです。君は?」

「○○だ。」

残念ながら周りの雑踏がうるさくて、彼の名をうまく聞き取ることはできなかった。

「それじゃぁ、良い旅を!」

そう言い残して、人ごみの中に彼の凛とした背中が消えていく。手を大きく振って見送りながら、やがて夜の闇に消えていった青年。助かった。心の底から感謝した。

それにしても、彼はかっこいい。見ず知らずの外国人である自分をかばってくれて、警察に反抗してくれるなんて。その時に心に強く思った。

もし日本でインド人が警察に尋問されていたら、絶対に助けてあげようと!

#94「7DAYS INDIA その10」


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