#96「東北へ ~現状~」
公開日:
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最終更新日:2015/07/12
旅
2011年 6月3日 金曜日
首都高を越え、東北道を北へと走る。
実家のある栃木を抜け、福島へ入ると東北の空は良く晴れていた。
時折、自衛隊の軍用車やパトカーが通り過ぎる。それでも、高速道路から眺める景色に大きな変化はなく、のどかな田園風景が目の前を静かに通り過ぎていった。
宮城県へ入り、高速を降りた。
どこのお店も通常通り営業している。
車も走り、人も歩いている。
どこにでもありそうな平凡な街並。
思っていたほど、東北の被害は大きくなかったみたいだ。深刻なのは、ごく一部の町だけなのだろうか?
車を東へ走らせた。
しばらく進むと言葉を失った。
感覚としては、突然だった。
大きな道路を一本超えただけで、突然世界が変わってしまった。
巨大な何かの力によって、叩き付けられたように潰された車。
道ばたに転がる自動販売機。
アスファルトの上に倒されたATM。
爆撃を受けたように廃墟になってしまった焼肉屋。
不思議なことにさっきまで晴れていた空も雲行きが怪しくなり、砂埃が俟っている。
それからさらに、車を東へ走らせた。
海へ近づくにつれ、被害はさらに大きくなっていった。
1階だけ流されてしまった、わずかな柱だけでなんとか建っている木造の家。
放り投げ飛ばされたような墓石の群れ。
海水でにじんだアルバムの写真。
駐車場しか残っていないコンビニに車を停めて、海へ向け足を進めた。たくさんあったはずの住宅も今はなく、建物の基礎しか残っていない。住宅街だったはずのこの土地一帯が、砂で埋もれている。
津波を想定して植えられた防風林も全てなぎ倒されている。6メートルの高さを誇る堤防も無惨に破壊され、その先に海がいた。いままで、ずっと人間と仲良く共存してきたはずの海。それなのに、そこには何事もなかったように平気な顔をした無表情な海がいた。
思っていた以上に、東北の被害は大きかった。
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