#99「カメラマンへのはじめの一歩 前編」

公開日: : 最終更新日:2015/07/12 写真

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プロとしてカメラマンになって早10年。実は写真の学校に通って勉強したことが一度もない。それでは、どうやって写真の基礎を勉強したのか?今回は自分が実践した、写真勉強法の話。

そもそも写真の世界に目覚めたのが、21歳の春。当時の僕は大学を休学して、バイクにまたがり、オーストラリアをのんきに旅していた。最初は旅の記念程度に撮っていた写真。ところがしだいに、バイクで走ることよりも写真を撮ることの面白さに加速的にハマっていった。

それから2年後、帰国。撮りまくったフィルムと一緒に、カメラマンになる野望を胸に秘めて。休学したのは、大学3年終了後。なので、もう1年大学生活が残っていた。そして23歳の夢見がちな青年は悩んだ。

「このまま田舎の工業大学で建築を学ぶべきか?」それとも「退学して写真の学校へ通うべきか?」人生に立ちはだかる、運命の分かれ道。

出来ることなら写真学科のある大学や、専門学校に入り直して勉強したい。でも2年も休学して旅をしていたので、高額な授業料を払うお金なんてあるわけがない。それに親が大変な思いで払ってくれている、大学の授業料を無駄にするような真似はできっこない。このまま大学を辞めずに、お金をあまり使うことなく、写真の勉強をする方法はないだろうか?

そして、あれこれ迷った末に、ひとつの答えにたどり着いた。その先に見つけた光が「写真の通信教育」。好きなときに我が家で学べる。しかも卒業までに必要な受講料は約3万円。

これだ!

意気揚々と郵便局に走り、早速申し込み完了。その数日後、自宅に5冊の教科書が届いた。内容は、写真の歴史、レンズやカメラの基礎知識、ライティング、白黒フィルムの現像方法、写真のプリントの焼き方、などなど。

課題ごとに、写真の知識に関するテストと、与えられたテーマにあった写真を撮影して提出する。これなら大学に通いながら、あまりお金をかけずに、写真の勉強ができる。目の前の薄暗かった道が、パッと明るくなった。

はずだった……………。

冷静に考えると、提出できない課題があることに気がついた。全ての課題を提出しないと、もちろん通信教育を卒業することはできない。困った課題とは、フィルムの現像方法とプリントの焼き方。

こればかりは教科書を読んだだけでは、わかりずらいし、引き延ばし機や、暗室がないと写真をプリントすることができない。
またまた困った。機材は高価だし、実家に暗室などあるわけもない。

どこかに引き延ばし機と暗室を無料で貸してくれて、プリントの方法を教えてくれる優しい人はいないだろうか?

そして、あれこれ考えた末に、ひとつの答えにたどり着いた。その先に見つけた光とは………..?

そう言えば、大学に写真部があった!
入部すれば写真をプリントする方法を教えてもらえるはず!?」

これだ!

写真部の人達なら知識も技術もある。入部すれば、いろいろ教えてもらえるし、暗室も使わせてくれるはず。薄暗くなりかけた目の前の道が、またまたパッと明るくなった。

こうして僕は大学4年にして写真部に入部することを決めた。それから数日後。カメラマンになる夢を抱きながら高鳴る胸を抑え、写真部と書かれた部室のドアを開けた。

するとそこには、暗室でプリントされた写真が部屋中に飾られ、写真談義に花を咲かせる部員達の熱気が部室中に溢れていた。

わけではなかった。

目の中に飛び込んできた光景は予想もしていなかった惨状だった。

「ピコピコピコ!あっ!やべー打たれたぁー!」
「よっしゃー!2ランホームラン!」

部室のドアを開けると、聞こえてきたのは写真談義に花を咲かせた部員達の声ではなく、14型のテレビに向かってファミコンで遊んでいる若者達のはしゃぎ声だった。

「すみません、ここ写真部ですよね?入部したいんですけど……..。」

すると、煙たそうな顔しながら茶髪の若者が振り向いた。

「そうだけど、君、1年生?」

もう一人のゲームをしていた若者も、不信そうにこちらを見つめている。

「あっ、いや実は4年生なんですけど、しかも2年間休学してました。」

すると、彼らの表情が一変。

「えっ!?そうなんですか、すみません。」

意外と年上を敬う心の持ち主達だったようで、ホッとした。

「しかし、なんでまた4年生になって写真部に入ろうと思ったんですか?」

そこで一部始終、事情を説明。するとその数秒後、またもや問題が発生した。

「そーなんですか、でも困ったなぁ。実は僕たち写真部というのは名ばかりで、写真の焼き方とか全く知らないんですよ。」

「えっっっっっっーーーーーーーー!!!!」

心の中で僕はムンクの叫びのごとく、絶叫した。

「カメラマンへのはじめの一歩 後編」


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