#102「遠い空」

公開日: : 最終更新日:2015/08/27

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カトマンズから日本に帰ってきた翌朝、いつもの時間に会社へ向かった。
その途中、副都心線の渋谷駅の構内に設置してある自動販売機が目に映ってふと、立ち止まった。夏みかんと書かれたジュースで目が止まり、百円玉一枚と十円玉二枚を財布から取り出して、自動販売機にお金を滑らせた。

「バタン!」
物が落ちる音が小さく響き渡る。ジュースを手に取りキャップをひねって、黄色い液体を口の中に流し込んだ。ゴクリゴクリと音をたて、液体が喉を流れて胃袋の中へ落ちた。

冷たかった。
飲みたいと思った時に、冷たいものが飲める。駅の構内の片隅で、ささやかな季節を感じることが出来る。そんな当たり前のことが、なんだか不思議でとても新鮮なことに感じた。

ネパールはどこでも電気が不足していて、レストランでコーラを頼んでも、ぬるいコーラが出てくることの方が多かった。
たまに冷たいコーラが運ばれてくると、それだけで「今日はついてるな。」と一人で嬉しくなった。

西早稲田駅で降りて、ふと空を見上げた。新緑が綺麗で日本の季節はいつの間にか春から次の季節へ移ろうとしていた。この空が砂埃の舞うカトマンズと続いてるんだなとぼんやりと思った。
この街からどこまでも遠い空をぼんやりと思った。

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