#111「No pain No gain 」

公開日: : 最終更新日:2015/07/12 ネタ話

dentist
何事も痛みなくして、得るものはない。

そう自分に言い聞かせ、心を静ませながら、雨模様の土曜に重たいドアを開けた。ここは新丸子の歯医者。ついにこれから口の中で、何年も前から、居座り続けた悪魔を退治するのだ。

その悪魔の名は親知らず。

「死ぬほど痛いよ。」
「大量に口から血がでるよ。」

まわりのみんなは、そんな言葉を目をつりあげながら口にした。親知らずを抜いたことのない自分にとって、それは未知数の痛み。それでも、覚悟を決めて診療室の椅子に静かに座った。

「おはようございます。それじゃあ、抜いちゃっていいですかね。」

なんか先生、ちょっと半笑い。

「ははっ、お願いします。」とつられて自分も半笑い。

そして、ついに運命の時は来た!
恐怖の治療は執行されたのだった。

10分後。

奇跡的がおこった。
感動するほど、痛くない!
拍子抜けしてしまうくらい、あっさりと治療は終了。
長年悩まされ続けたた小さな悪魔が口の中から、退治されたのであった。

神降臨。
新丸子に神がいた。
先生のゴットハンドが、僕を恐怖から救ってくれたのだ。

「先生ありがとうございます!」

「お疲れさまでした。」

「もう僕は昨日までの僕じゃないんですね。」

「そうだよ、君は生まれ変わったんだ。」

先生の優しい目は、静かにそう語りかけていたようだった。


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